Research

1. Superconductor Computing

現代の最新マイクロプロセッサの動作周波数は2〜3 GHz程度です.本研究では,その30〜50倍,すなわち,未だ世界的にも達成できていない 100 GHz を超える次世代マイクロプロセッサの実現を目指しています.これまでに,我々が考案した新しいアーキテクチャに基づく演算回路の実証に成功しました(約50GHz@5mWで動作する乗算回路など).今は,これをマイクロプロセッサへと発展させる活動を行っています.また,超伝導状態で動作する超高速AIプロセッサの研究開発も行っており,機械学習と新デバイスを繋ぐ新方式の確立を目指します.

2. Quantum Computing

現代のコンピュータでは実現し得ない圧倒的性能の可能性を持つ情報処理形態として量子コンピュータが世界的に注目を集めています.しかしながら,量子コンピュータの研究はまだまだデバイスレベルが主流であり,「コンピュータシステムとして構築するためのアーキテクチャ技術」は未開拓の領域です.また,量子コンピュータには多くの欠点が存在するのも事実です.そこで本研究では,現代コンピュータと量子コンピュータを融合したハイブリッドアーキテクチャを探求しています.

3. Nano-Photonic Computing

人類の夢である光速で動作するコンピュータの実現に向けた研究を行っています.光コンピューティングの歴史は古いのですが,今は大きく状況が異なっています.それは,シリコンフォトニクスやナノフォトニクスの技術が進展し,大量の光素子を集積することが可能となってきた点です.その結果,大規模かつ超高速な光コンピュータの実現がついに可能になりつつあります.本研究では,現代のコンピュータとは一線を画す新しい光電融合型コンピュータ(特に,AI処理など用途に特化した新アクセラレータ)の実現を目指しています.

4. Secure Computing

IoTシステムのセキュリティを向上させるため,ハードウェアによるセキュリティ対策技術に関する研究を行います.CPUなどのハードウェアを対象にセキュリティ技術を導入することで,マルウェアを実行させない,または,仮に実行しても早期に発見対処する技術の確立を目指します.具体的には,機械学習による動的マルウェア検出技術や,仮にマルウェアに感染しても他に被害を拡大させないために安全に機能を停止する技術に取り組みます. さらに,より堅牢なIoTシステムの実現を目指して,メモリへのアクセス情報を秘匿する技術にも取り組んでいます.通常,メモリアクセス情報の秘匿には性能や電力の犠牲が伴います.モバイル端末など低電力動作が求められるIoTシステムにおいて,性能・電力オーバーヘッドが低いメモリアクセス秘匿技術の実現を目指します. また,これらのハードウェアセキュリティ技術は自動運転車両へ適用して実証実験を行う予定です.

5. Environmentally Scalable Computing

人類の進化を支える上で、コンピュータのさらなる発展は必要不可欠です。今後は、ダムや道路などの社会環境、森や河川などの自然環境にもコンピュータが埋め込まれ、その数は膨大になると予想されます。その一方、コンピューティングによる地球環境への悪影響がより深刻になってきています。例えば、コンピューティングによって消費されるエネルギーは年率3倍のスピードで増えているという報告もあり、このままでは地球上の多くのエネルギー資源を消費しかねません。そこで、自然エネルギーや環境エネルギーのみでの動作を前提としたコンピュータ構成法など、持続可能でクリーンな情報社会を実現するための環境指向コンピュータの実現に向けた研究を進めています。

6. Domain-Specific Edge/Cloud Computing

我々の日常生活はコンピュータシステムに支えられています.特に,自動車やスマートフォン,家電製品など,様々な身の回りのシステムに内蔵されるシステム(組込みシステム)は今後ますます重要になってきます.今後は,VR (Virtual Reality)やAR (Augmented Reality) などの新しい応用が展開されるでしょう.このような組込みシステムでは,アプリケーションからの要求を満たすための性能だけでなく,低コスト化,低消費電力化,安全性の向上,信頼性の向上,など,様々な制約を満たさなければなりません.これらの課題を解決すべく,書換え可能な「やわらかい」ハードウェアであるFPGA (Field Programmable Gate Array) とCPUを搭載したハイブリッドコンピューティング技術,QoS(Quality of Service)を満たす上で計算の間違いを許容することで圧倒的な高性能化や低消費電力化を実現するアプロキシメート・コンピューティング技術,電力効率の高いAI処理アクセラレータなど,クラウド環境との連携も見据えた次世代組込みシステムを支える様々な研究開発を行っています.

7. CPU/Memory Microarchitecture and VLSI Technology

コンピュータの主要構成要素であるマイクロプロセッサや GPU (Graphics Processing Unit) といった処理エンジン,ならびに,キャッシュや主記憶といったメモリシステムを対象とした新しいマイクロアーキテクチャを提案します.例えば,アウトオブオーダ・プロセッサの実行効率改善,データ圧縮技術を用いたキャッシュメモリ・アーキテクチャ,予測技術を用いた高性能・低消費電力実行法,などが挙げられます.チップレットや3次元積層といった新しい半導体集積回路技術にも着目し,これらの利点を最大化するマイクロアーキテクチャ技術を探求しています.